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ぺーじむいしゅきん−北海道十勝の原野より

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#春の原野/カラスを食べる
昨日は、十月少年の友だちSちゃんのお母さんMさんが、薪を取りに来ることになっていた。
朝の8:30ごろ、「そろそろ掃除しよう」と思っていたら、玄関の鈴がカランカラン!
「ええっ! 確かに”何時でもいい”って言ったけど、いくらなんでも早すぎでは…」と思って出てみると、そこに立っていたのは猟師さん。

「今日はこの近くで猟でもしようかと思って。免許とったそうだけどどうですか?」
この冬、くくりわなでの猟を試みたものの、罠掛けの稚拙さにより鹿に避けられたり、どっさり降った雪で罠が作動しなくなったりとがっかりしていたわたし、ベテランの猟師さんに相談できる機会はありがたい。罠のかけかたについてアドバイスをいただいたり、やっぱり銃がないとダメだろうか…などと相談させてもらっていると、空気銃の話になった。

「カラスなんかだと空気銃で十分なんだけどね。」
「カラスのお肉はおいしいって何人もの人に聞いたことがあるんですけど、本当ですか?」
「ああ、赤身だけどね、食べられるよ。ここにいれば撃ってあげるんだけど…」

原始人/狩人に憧れている四月少年はカラスを獲るところを見たがったが、ハンターがいることを知っているのか、いつもは近くまで寄ってくる(そして鶏の卵を盗んだりする!)カラスたちが寄ってこない。
猟師さんたちは「今度鹿の解体の時に呼んであげるよ」とこれまた大変ありがたい!お言葉を残して帰っていったが、しばらくすると
「カラスが獲れたけれどいる?」
と戻ってきてくれた。

猟友会で活動しているハンターたちは町の「有害鳥獣駆除員」として、農作物を荒らす鳥獣を駆除する役目を担っている。
有害鳥獣の種類はいろいろだが、鹿やキツネ(豆やコーンなどを食べる)の他にカラス(牛にいたずらをして、生まれたばかりの子牛を殺すこともあるらしい)も「有害鳥獣」として指定されており、駆除の対象となっているのである。
わたしがもらわなければ処理施設で処分されてしまうお肉。ありがたくいただくことにした。
イメージの悪いカラスだけれど、フランス料理ではジビエとして扱われているのだそうである。


===閲覧注意===
ここから先、カラスの解体処理の画像があります。
ご覧になりたくない方は飛ばしてください。

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想像していたよりも重くて、あたたかい。

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まだあたたかくて、生き物の匂いがする。

すでに心臓は止まってしまっていたため、うまく血抜きはできず。
羽根毟りは外でやろうかと思ったのだが、お湯が使えないので洗面所で行った。

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本当は濡らさない方が楽だけれど、手に張り付いてくるのでお湯で流しながら行った。
鶏と同じで独特の匂いがあり、一時間も羽根を毟っているのは精神的に辛い作業。
十月少年「カラスかわいそう…食べたくない…」
四月少年「カラスの肉ってどんな味だろう? もうお肉になってきたね? 早く食べてみたい!」

と、そこへ本来来るはずだったMさんとSちゃんが到着。
「あああ〜全く掃除していない。そしてわたしの両手にはカラスの羽が!!」

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Mさんと子どもたちには室内で遊んでいてもらい、カラスの頭を鉈で落とす。
思っていたよりも肉付きがよい。ハトなどもこんな感じなのかなあ。

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精肉。
ナイフで切るのは主に膜で、肉はそれぞれの部位で綺麗に手で剥がすことができる(はず)。
まだ下手だけれど、ほぼ無駄なくとれたと思う。

さて、無事にお肉になったことにほっとして、すこし原野を案内することにした。

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まだマダニはいないかな?
去年は一度もマダニに咬まれなかったので、わたしたちが越してきて動物たちのルートが変わり、このあたりの笹からマダニが撤退してくれたのではないかと期待しているのだが、さてどうだろう。

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だいぶ雪も溶けてきた!

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雪どけ水で春だけできる池と小川。

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いきなり長靴に水が入る…

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フッキソウ!

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水の音が心地よい

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水は透明

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透明な水をみるときのこの喜びはなんだろう

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ぼっこ(北海道弁で棒のこと)で魚釣り(草をひっかけてもちあげる)を楽しむ十月少年

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雪に埋まったり川を渡ったりしながら「ひとつめの池」を目指す

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家が遠くに見える

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ひとつめの池到着

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せせらぎのなかのふきのとう!

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氷が張っていた池に緑が。

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お水気持ちいいなあ〜

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ヤチボウズ

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年少二人が岸辺で待っている間に…

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おもむろに池に入る四月少年(六歳)
好きにしておくれ。

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ヤナギの銀の花をみるとすずしいような、あたたかいような不思議な感じ

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四月少年、島に到着!
あの島はあとすこしすると、オオバナノエンレイソウが咲いてとてもいい場所になるのである。

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おーい少年、わたしもそこの場所好きだよ。

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つなぎを脱いで、

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くつろぎたい気持ちもよくわかるよ。
その島で一日中ぼんやりお茶を飲んだり、本を読んだりしたい。

あの小さな島にわたしが惹かれる理由は、あの島が「子どもサイズ」であることに関係しているような気がする。
子どもの頃の秘密基地、秘密の場所、隠れ家みたいなものを思い出させるから、なんじゃないかな。

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Sちゃん「みてーこのツル、楽器みたい!」

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せっかく日向ぼっこしたのに、帰りはまた冷たい。

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ヤナギのふわふわ、み〜つけた

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ヤチネズミにかじられた跡。

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自然の作りだす造形美、いつみても人間は敵わないと思う。

最後の笹斜面で半べそになっていたSちゃんだけど、それなりに楽しんでくれたそうな。
原野遊びは木の枝で顔を打ったり、転んで怪我をしたり、虫に刺されたり、多くのリスクがあるけれど、「遊具がなくて素材がある」という環境は子どもが自ら工夫して遊ぶのにぴったり。観察したり道具をつくったり何かに見立てたり、冷たかったりどろどろだったりかさかさだったり暑かったり、沈んだりのぼったり、そんなすべてが子どもの世界を豊かにすると思う。
谷川俊太郎の文章を思い出す。

 ぬかるみで遊ぶから、草原の上に立ったからこどもは喜ぶのではない。
 喜びはすでに子供の身内にみなぎっているのだ。
 ぬかるみや草原に足や手で触れること、すなわち世界に自分の肉体で触れることが喜びを目覚めさせ解放する。
 それはひとつの爆発だ。
 そのとき心は身体を通して、しっかりと世界と結びつく。
 そこに生きることのもっとも根源的なかたちがある。

谷川俊太郎『「ん」まで歩く』より


「そのとき心は身体を通して、しっかりと世界と結びつく」…自分の幼少時代の自然体験を考えても、すごく納得できる言い回し。
せっかくの原野、もっと十勝の子どもたちに開放したいなあ。

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さてSちゃんとMさんは無事に薪を積んで帰り、カラス肉を今晩のシチュー用に切る。
赤身でサクサクしていて、鹿みたい。

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腿とレバー、心臓。

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まずはフライパンで

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焼いてみる。
焼いている匂いも、鶏より牛や鹿に近い気がする。
味見をしてみると、固いけれど味は悪くない。やっぱり血抜きがうまくできなかったから多少臭み(レバーのような)は残ってしまった気もするけれど、固くて脂がない鹿…に近いかなあ。

鍋で赤ワインと煮込んでシチューにしてみた。

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どうだったかと聞かれても、わたしにはよくわからない。
というのは、やっぱり一人で何時間もかけて羽根を毟って解体して精肉するのは、ものすごく疲れることだからだ。
自分で殺したわけではなくても、やはり精神的に負担を感じる。
あれほど「かわいそう」と言っていた十月少年は、「お肉おいしい!お肉おかわり!」と食べていたが、わたしは少し食べたら満足してしまった。

つらつらと考える。

これが自然なのかもしれないなあ。
自分でこれだけの時間をかけて解体してみると、「毎日は食べなくていいや」と思う。
でも、そうして肉をしばらく食べられないでいたら、きっと鹿が獲れたときには大喜びして、ものすごくおいしくいただけるに違いない。みんなで肉を分けて、干したり燻製にしたりして、少しも無駄がないようにするだろう。
肉を食べるために自分で解体するしかなくなったら、きっと「基本的に草食」の人が増えるんだろうなあ。
でも、そういえば『大草原の小さな家』ではワタリガラスだったか何かを毎日撃ってパイやら何やらにして食べていた。昔のアメリカのお母さんは羽根を毟って解体して精肉して夕食を作っていたのだなあ。
解体業者さんは、普段お肉を食べるのかなあ。食べられるのかなあ。
慣れたら平気なのかなあ。
わたしたちは普段、解体業者さんに殺しを押し付けて、おいしく肉を食べているんだなあ…


こんな経験を重ねても、わたしは完全に草食になることはないだろう。
お肉もお魚もおいしいと思う。
時々は食べたいと思うし、それが自然なことだとも感じている。
でも、いただくときの心持ちは、知らなかった頃とは全然違う。
生きていた、生き続けたかった命があり、殺してくれた人があり、解体してくれた人があり、精肉してくれた人があり、そのうえで味わうことができるのだ。

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シチューなので赤ワインを飲んでいたけれど、赤ワインの中の肉と合う要素、鉄のような、血が滴るような感じが、解体者であるわたしにとってはどうにもくらくらさせられるものであったため、日本酒に取り替えた。
あ〜、おいしい、亜麻猫。軽やかで爽やかで甘酸っぱい。



翌日、車を運転していてカラスが目に入ったとき、突然不思議な感覚がやってきた。
何かあたたかい感覚、それは、自分の手のなかで羽を毟られたカラスのあたたかさ。
わたしは、今では自分の身体の一部になっているカラスの命のあたたかさを感じ、カラスをいとおしいもののように感じたのだ。
「血となり肉となる」ということが、感覚として実感できた瞬間だった。

これまでは、鶏の卵を狙ういやな鳥。なんとなく不吉な黒い鳥。
これからは、それが今を生きているあたたかい命だということを忘れることはないだろう。



2016.04.02 Saturday ... comments(2) / -
#Comment








昔 ローラ インガルス役のメリッサギルバートに手紙を書いたら サイン入りの写真が返送されました。

| yoshida | 2016/04/03 11:25 AM |
吉田さん、ありがとうございました!
大草原の小さな家、所沢に住んでいた頃はそれほど面白いと思いませんでしたが、原野に住んでから読み直したら、色々と興味深くて。ドラマもファンが多いですよね。
| yukoejima | 2016/04/09 5:29 PM |
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